4.はしれ!コーイチちゃん!!

 イタリアでは、日本以上に厳しいロックダウンが続いていた。

 公道は無人で、一台の車も走っていない。

 途中、検問があったのを、何とかやり過ごして、ボクらはイタリアの街を静かに爆走した。

 闇雲に走っても意味がなかった。

 思えば、ヒロミさんのご子息がいる街すら、わかっていないのだ。

「最後のメールでは、写真が届いたんですが」

 うん。どこかの海岸の様子だね。オミクロン株が流行する直前みたいだね。

 表示は、、、2ヶ月前か。

「コウイチちゃん・・・このググれる?」

 ああ、なるほど。

 一回、テツフミのiPhoneで、画像を取り込んでもらって、ボクのもとに転送。あとは、画像検索でどこの場所で撮られたものか、検索をかけてれば、ストリートビューとの合わせ技で、どこの写真か判明できるだろう。

 でも、それをするには、ひとつ問題が、、、。

「なんだい?」

 最近、ボク、Siriとアレクサーと仲が悪いだよね。

「・・・うーん。コウイチちゃん、いうのもなんだけど、もう少し友達を大事にした方がいいよ」

 あれは友達なんだろうか。

「検索できましたよ」

 そうこうしているうちに、ヨウコが手持ちのiPadを使ったらしい。

 僕らは、画面を覗き込む。

「アマルフィ海岸?」

 3人は、顔を見合わせた。

 確か、以前からユウキが旅行したいって言ってた場所じゃないか!

「そこを中心に、しばらく仕事するって書いてあります」

 ということは。

 この付近で聞き込めば、ヒロミさんの息子さんの足取りがわかるに違いない。

 試しに、ヒロミさんの息子さんの名前を検索にかけると、、、。

「あ、活動予定が書いてありますね」

 

 しばらくの検索で、わかったのは。

 確実に、息子さんは、この街で足止めをくってしまっているという事実だった。

「つまり」

 今は、ホテルに缶詰だろう、と推測できる。

 さっきから、黙り込んでいたヒロミさん。

「息子にメール送ってみます」

 よろしくです。

「ねぇ。コーイチちゃん。ガソリンは大丈夫?」

 ふと、テツフミがボクに声をかけてくれる。

 実は、そうなんだ。

 そろそろ、給油したいんだけど、、、どこにもないよね、ガソリンスタンド。

「ガソリンがなくなったら?」

 多分、単純に走れなくなるんじゃないかなあ?と、つぶやくボク。エコカーな自分に過信してたけど、先日のハコスカと同じ状況になった時、ボクの意識は大丈夫なんだろうか?

「考えたくないな」

 その前に、息子さんが見つかればいいんだけど。

 コンコン。

 警察官だ。

 道端に止まっていたボクの窓をノックする音に、ボクらは顔をあげた。

 ヒロミさんが、英語で対応する。あとで聞いたら、ヒロミさん。若い頃、青年海外協力隊にいたおかげか、片言の英語が話せるんだとか。

「大丈夫だよ。パスポートは持っているし」

 と呑気なテツフミ。

 だ、か、ら。今は、イタリアって、コロナの影響でロックダウンじゃなかったけ。街に出たら、処罰とかされるんじゃないの?

「・・あ・・」青ざめるテツフミ。

 え? ちょっと。

 パニックになって、いきなり、テツフミがアクセルを一気に踏み込んだ。

 ブォぉぉん。

 派手なマフラー音たてて、急発進するボク。

 後ろを向くと、警官が何か叫んでる。

 数台のパソコンがサイレンを鳴らしながら、ボクを追う。

 さながら、ルパン3世のような逃走劇。さしずめはボクは、クーパーか。

 あのー。そろそろ、転移で逃げた方がいいんじゃないかな?

「でも、息子さんが・・・」

 ちょうど、その時、ヒロミさんの携帯電話が鳴った。

 ・・・連絡が取れたみたいだね。

「テツフミさん。いいアイデアがあるんだけど。今のうちに、息子さんとiPadでフェイスタイムできないかしら?」

「でも、私、ガラケーだから」とヒロミさん。

「だから、です。あたしのスケッチ用iPadをつかってください!」

 ヨウコが、ヒロミさんにiPadを差し出す。

 一方、ボクはカーチェイス。

 今回、3人が乗っていて、しかも相手がパトカー数台。

 これって。あまりに不利な戦いじゃない?

 路地を闇雲に走りながら、わくわく興奮しているボク。

 ああ、首都高速の血が騒ぐ。

「コーイチちゃん、そこをなんとか。この際、多少の反則技も許すから」とテツフミ。

 つまり、多少の犯罪も認めると。

「うん。このまま捕まったら、職場から懲戒免職されかねない」

 OK。悪いようにはしない。

 にやり。と思わず、にやけるボク。この際、ボクの顔はどこなんだ、とかの、ボケはなし!

 しかし、地元警察を舐めてはいけない。

 先回りと、路上封鎖で、ボクの走ることができるルートは完全に、封鎖されていた。

 それ以上に、もうボクのガソリンも残っていない。

 やばいよ! 転移して日本に帰らないと、帰れなくなるよ。

「つながりました!」

 後部座席の2人が、無事、回線を繋いだらしい。

 iPadの画面に、ヒロミさんの息子さんの顔が映る。

 息子さんとの2人の会話は・・・英語? 

 テツフミ! もう、ダメだ。いくらボクでも、あと1キロも走れない!

「でも、さすがに、やっと息子さんとの再会なのに、、、頑張れ!」

 ボクは、意識を集中する、、、が。

 あれ? 力が入らない。

「コーイチちゃんどうした?」

 、、、ははは。もう、ガス欠みたい

 どんどん、意識が薄れていく。

「コーイチちゃん! おいっ! コーイチちゃん!」

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