「これで、私たち、宮崎と長崎のみなとの講演を終わります。ご協力いただいたみなさま、本当にありがとうございました。次回講演をぜひお楽しみにお待ちください」
オオタオ所長の挨拶に、公会堂いっぱいに湧き上がる大拍手。
その割れるような響きが、この講演の成功を物語っていた。
「ハッピーエンドでよかったねぇ。リョウコさんとヨウコさんが拐われた時にはどうなるかと思ったよ」
上機嫌のみんなを乗せて、ボクはご機嫌で九州道を駆け抜ける。
ああ、言うまでもないことだが、みんなが無事、コノハナサクヤヒメをニニギノミコトの元に送り届けたあと、ゴロウ先生が保管していた原稿のおかげで長崎みなとの講演発表は、無事に済ませることができた。
振り返れば、無茶振りがなかったら、大変なことになっていた。本当に助かった。
テツフミ、フミカズ、ヨウコ、リョウコの4人は、わいわい盛り上がる。
そもそも、この騒動は何がきっかけなんだっけ?
「奥さんの本音をしっかり共感しない、旦那さんの失敗じゃない?」
辛辣に言葉を吐き出すヨウコ。
思えば、あれから、ニニギノおじさんはしっかり、ヒメに謝ったんだろうか。
それにしても。ボクたち何かを忘れている気がするんだけど。
「ユウキくんは、あれでよかったの?」
「うーん。本人の強い希望だしなぁ・・・」
全員が額に脂汗をにじませる。
「コーロギ師匠! ぜひ自転車ダイエットの極意をお教えください!」
「ユウキよ。無心で漕ぐのです。ただひたすら」
以来、6ヶ月。
宮崎から長崎へと高速道路、ペアシートの自転車に乗ったサイクリング2人づれが見られるとの都市伝説がハイカーたちの間で噂になったのだった。
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