第4話 高天原にて

リョウコです。

あたしたち、誘拐されちゃいました。

てへっ❤️‍🔥

今、あたし。どこにいるんでしょう。

ここ、宮崎県だと思うんですよね。ニニギノおじさんが連れてきたのは、雲の上。

空中に県境はないから、もしかすると九州のどこかの上空かもと思うんですけど、ヨウコさんとあたしはその雲の上のお屋敷に住まわされていました。

というか。

ここに連れられてから、時間の概念、まったくないんですよね。

ニニギノさんがいうには、高天原、、、らしいんですけど、下界とは時間の流れそのものが違うんだそうで。

もしかすると、浦島太郎みたいに下界にもどったら、100年が経っていたとかなしですよ。宮崎の研修会が終わっちゃったらどうするんですか。警察さんくらいは動いてくれるかなぁ。まぁ、手の施しようはないかもしれないけど。

「ねえ、ヨウコさん。どうします?」

「・・・ふぇ?」

変な返事をしたヨウコさんの手元をみると、iPad。

ああ、こんなところまで持ってきたのか、仕事道具。Apple Pencilを走らせて、お屋敷の様子をスケッチしている。どこまでマイペースなんだろう。ああ、それについてはあたしも変なことは言えないけど。

「お客人。こんなことになって申し訳ない」

気がつくと、目の前に能面を被った巫女さんを従えたニニギノおじさんが立っていた。

「下手なことはしない。彼らなら探せるはずだ、、、というか、彼らじゃなくちゃ探せない」

うーん。いい加減なこと言うなあ。

「どうしてそう思うんです? その根拠をおしえてほしいですー」

「妻の残滓がしたからだ」

ふーん。なぜ、奥さんのコノハナサクヤヒメの匂いねぇ。香水?鼻の敏感なあたしでも気が付かなかったけどな。

「で、あたしたちをどうするつもりなんです?」

まぁ、このおじさんくらいなら、痴漢撃退は簡単だ。

いざというときは、力を使う。

あたしとヨウコさんの力で、十分、この場を切り抜けられる。あたしの力は、人や物に命や能力を吹き込む力。発動条件が難しくて、スマートフォンで誤変換したことが現実になる。一方で、ヨウコさんはiPadで描いたものが実体化する能力。

・・・あれ? ここ電波、届いているんだっけ? え?圏外?

「しまったああああ!!!!」

「いきなり、どうしたのだ?」

突然、叫び出したあたしに、ニニギノおじさんがびっくりした。

どうしよう。これめっちゃやばい状況なんだけど。

「まさか、あたしたちに変なことするつもりですか?あんなことやこんなことやそんなことや・・・」

妄想の限りをつらつらまくしたてるあたし。

「ほらほら、リョウコさん。おちついて。おじさんが困っているから」

ヨウコさんがあたしを優しくなだめる。

「私も天孫である。誓って良識は守る。

お前さんたち、瞬間移動が使えるのだろう? あの車に妻の護符も貼っていたことだし」

「まあ、コーイチちゃんは瞬間移動が可能ではありますけど・・・妻の護符?」

あたしはハッとする。

ヨウコさんに耳打ちするあたし。

「あのー。ニニギノおじさん。お願いがあるんですけど」

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