第3話 デートの聖地と古代人

ユウキ。能力名「ユウキワールド」時間を止める能力者。

ヨウコ。能力名「ワイルドアート」効果は描いたものの実体化。

フミカズ。能力名「マッドレコード」能力は光速タイピングで記録を残す。

リョウコ。能力名「ミスビッグマザー」人やものに能力を付与。

テツフミの能力名は「トラブルプリンス」不幸を引き寄せる無茶振られ体質。

長崎から来た一行も、宮崎の「みなと」に挨拶を済ませると、手軽に打ち合わせをすませて、延岡市内を観光に出ていた。

コーロギさんが道案内を務めてくれる。本当にありがたい。

「この地は、神様が出逢った地だと言われているんです」

澄んだ空気に、市街が美しく映える。

その美しいコントラストは、車のボクでも見惚れてしまうような愛宕山の風景。

ホームページによると、愛宕山は出会いの聖地とか。

カップルで登ると別れてしまう長崎の稲佐山よりは、ずいぶん勝手が違うようだ。

それはいいとして。

おーんおんおん。おーんおんおん。

一人のおじさんの号泣する泣き声が、あたり一面に響いている。

・・・。

一行は、困ったように救いを求めてコーロギさんを見る。

長い髪を頭の両方にまとめた麻の服を着て、その姿は古代人。

「神話の時代、ニニギノミコトがコノハナサクヤヒメに一目惚れした・・・」

無視してコーロギさんが説明をすすめようとするたびに、おじさんは泣く声が大きくなる。

「一目惚れした・・・」

おーんおーん。

「ひとめ・・・」

おーんおーんおおおおおん。

「五月蝿いわっ!」

男性陣の蹴りが一斉におじさんの後頭部に決まる。

たんこぶを作ったおじさんは、ささっとヨウコとリョウコのうしろに逃げる。

「あのー。どうして泣いているんですか?」

リョウコが優しい声で、おじさんにたずねると・・・・

「昨晩、妻が夜逃げしたんだ」

話はいきなり重かった。

なぜか、フミカズがうんうんとしきりにうなづいている。

「わかります。わかります。夫婦喧嘩のダメージは、翌日に帰ってきますものね。私も妻が・・・」

「なんか言った?フミカズ?」

笑顔のまま、フミカズの襟首をつかみ、Apple Pencilをアイスピックのように構えるヨウコ。

お願いだから、そこで夫婦喧嘩を展開しないでほしい。

「おじさんの名前は、なんというんですか?」

「私の名前は、ニニギノミコトだ」

無意味に胸をはるおじさん。

コーロギさんが目をみはる。一行は、その様子にただならぬものを感じて、彼を見る。

「ねえ、みんな。それって、今、コーロギさんが説明しようとしていたことを関係あるんじゃない?」

ボクはそっと、6人にそっと提案してみる。

「あのー。念の為、聞きますけど、奥さんって、コノハナサクヤヒメっていいます?」

テツフミがおそるおそる聞いてみる。

目を涙でうるませて、首をふるおじさん。「そうだ。私は高千穂の主、五穀豊穣の神、ニニギノミコトだ」

一行の動きが止まった。

とうとう、現れたか。この話にも日本神話の神様が。

すかさず、フミカズがモバイルのキーボードをタイピングしてるし。

「思ったんだけど、ここで無視すると、天罰が落ちるかもしれないわよ?」

女性2人がおじさんを庇うように助言する。

フミカズがすかさず、みんなのグループLINEに情報を転送する。 

 

「参考:延岡市ホームページ、、、だそうだよ」とはフミカズのコメント。

「道理で、ここ。男女のカップルが多いわけだ」

今まで黙っていたテツフミが周囲を見渡しながら、遠い目で話す。

「テツフミさん。私たちには縁のない話です」「まだあきらめないやい!」

ユウキとテツフミのどつき漫才展開はさておき。

「お前たちに使命を与えるっ!」

ニニギノおじさんがビシッと立ち直った。

おじさんが同時に、その場のリョウコとヨウコの肩を掴む。ふわり。と、ニニギノミコトと2人が宙に浮いた。

「明日までに、私の妻を探し出せ!」

天高い場所でニニギノミコトの姿が見えなくなっていく。

残された男性陣はお互いに顔を見合わせた。

「む、むちゃぶりだー!!!!!」

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