ユウキ。能力名「ユウキワールド」時間を止める能力者。
ヨウコ。能力名「ワイルドアート」効果は描いたものの実体化。
フミカズ。能力名「マッドレコード」能力は光速タイピングで記録を残す。
リョウコ。能力名「ミスビッグマザー」人やものに能力を付与。
テツフミの能力名は「トラブルプリンス」不幸を引き寄せる無茶振られ体質。
長崎から来た一行も、宮崎の「みなと」に挨拶を済ませると、手軽に打ち合わせをすませて、延岡市内を観光に出ていた。
コーロギさんが道案内を務めてくれる。本当にありがたい。
「この地は、神様が出逢った地だと言われているんです」
澄んだ空気に、市街が美しく映える。
その美しいコントラストは、車のボクでも見惚れてしまうような愛宕山の風景。
ホームページによると、愛宕山は出会いの聖地とか。
カップルで登ると別れてしまう長崎の稲佐山よりは、ずいぶん勝手が違うようだ。
それはいいとして。
おーんおんおん。おーんおんおん。
一人のおじさんの号泣する泣き声が、あたり一面に響いている。
・・・。
一行は、困ったように救いを求めてコーロギさんを見る。
長い髪を頭の両方にまとめた麻の服を着て、その姿は古代人。
「神話の時代、ニニギノミコトがコノハナサクヤヒメに一目惚れした・・・」
無視してコーロギさんが説明をすすめようとするたびに、おじさんは泣く声が大きくなる。
「一目惚れした・・・」
おーんおーん。
「ひとめ・・・」
おーんおーんおおおおおん。
「五月蝿いわっ!」
男性陣の蹴りが一斉におじさんの後頭部に決まる。
たんこぶを作ったおじさんは、ささっとヨウコとリョウコのうしろに逃げる。
「あのー。どうして泣いているんですか?」
リョウコが優しい声で、おじさんにたずねると・・・・
「昨晩、妻が夜逃げしたんだ」
話はいきなり重かった。
なぜか、フミカズがうんうんとしきりにうなづいている。
「わかります。わかります。夫婦喧嘩のダメージは、翌日に帰ってきますものね。私も妻が・・・」
「なんか言った?フミカズ?」
笑顔のまま、フミカズの襟首をつかみ、Apple Pencilをアイスピックのように構えるヨウコ。
お願いだから、そこで夫婦喧嘩を展開しないでほしい。
「おじさんの名前は、なんというんですか?」
「私の名前は、ニニギノミコトだ」
無意味に胸をはるおじさん。
コーロギさんが目をみはる。一行は、その様子にただならぬものを感じて、彼を見る。
「ねえ、みんな。それって、今、コーロギさんが説明しようとしていたことを関係あるんじゃない?」
ボクはそっと、6人にそっと提案してみる。
「あのー。念の為、聞きますけど、奥さんって、コノハナサクヤヒメっていいます?」
テツフミがおそるおそる聞いてみる。
目を涙でうるませて、首をふるおじさん。「そうだ。私は高千穂の主、五穀豊穣の神、ニニギノミコトだ」
一行の動きが止まった。
とうとう、現れたか。この話にも日本神話の神様が。
すかさず、フミカズがモバイルのキーボードをタイピングしてるし。
「思ったんだけど、ここで無視すると、天罰が落ちるかもしれないわよ?」
女性2人がおじさんを庇うように助言する。
フミカズがすかさず、みんなのグループLINEに情報を転送する。
「参考:延岡市ホームページ、、、だそうだよ」とはフミカズのコメント。
「道理で、ここ。男女のカップルが多いわけだ」
今まで黙っていたテツフミが周囲を見渡しながら、遠い目で話す。
「テツフミさん。私たちには縁のない話です」「まだあきらめないやい!」
ユウキとテツフミのどつき漫才展開はさておき。
「お前たちに使命を与えるっ!」
ニニギノおじさんがビシッと立ち直った。
おじさんが同時に、その場のリョウコとヨウコの肩を掴む。ふわり。と、ニニギノミコトと2人が宙に浮いた。
「明日までに、私の妻を探し出せ!」
天高い場所でニニギノミコトの姿が見えなくなっていく。
残された男性陣はお互いに顔を見合わせた。
「む、むちゃぶりだー!!!!!」
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