第2話 謎の原チャリ集団

予定よりかなり早めに現地入りを果たしたテツフミとボク。

「宮崎のみなとのオオタオです。明後日はよろしくお願いします」

「長崎のみなとのテツフミです。こちらこそ」

ボクたちは所長さんとの挨拶を済ませ、ビジネスホテルで宿をとる。

夜半。

テツフミとコーロギさんが、付近の居酒屋で食事しているとき、事件は起こった。

あれ?

原チャリ6台がぼくのいる居酒屋の駐車場にやってきたのだ。

あれは、間違いなく・・・途中でボクらをつけてきた原チャリ集団だ。

リーダーと思われる1人がぼくを見た。

指差し合う6人。

「カンパーイ!」

その頃の居酒屋にて。

テツフミとコーロギさんはビールで出来上がっていたところだった。

テツフミはお酒の誘惑に超弱い。しかも、飲むと人格が変わったりする。

運転席にテツフミを寝せたまま、会社から帰宅したことが何度か。側から見ると飲酒運転でいねむり運転かもしれないが、運転手なしで自動走行のできるボクにしてみれば、ノープロブレムの超安全運転。まあ、警察は許してくれないだろうけど。

居酒屋の扉が開いた。

あの漆黒のレザースーツを身に纏った6人組が入ってくる。

顔はフルフェイスのヘルメットで隠れている。

「テツフミさん。楽しそうですね」

ヘルメットをとるリーダー格。

穏やかな空気に、初老の紳士。顔がかすかに笑っている。

「ふぇ?」

半分、緩んだテツフミの表情が我にかえった。

「この飲み代は経費では落ちませんよ。領収書の無茶振りはお断り申し上げます」

「ご、、ゴロウ先生っ!」

テツフミが口に入れた伊勢海老を盛大に噴き出した。

つまり、追ってきた6人は、長崎大学保健学科の精鋭たち。ゴロウゼミのメンバーだった。

事情はこうだった。

コーロギさんたちがメールは、長崎大学のゴロウ教授の元にも同時に届いていたのである。

というか、元々、教授がメインな送り先でテツフミたちの方がサブだった。

「というわけです。あなただけに、研修会は任されません」

「・・ごもっともです。」

先ほどのまでの酔いはどこにいったやら。

閉店間際の居酒屋の畳の上で、正座をしているテツフミ、そしてなぜかそれに付き合うコーロギさん。

「・・・不幸だ」

座布団を抱きしめるテツフミ。

ああ、こういった事態を日頃なら事務局のコウゾウさんが見ててくれたのに。

ちなみに、コウゾウさんは現在、日頃やっているコーラス活動で海外慰問に出かけている最中だ。

「とにかく、明後日の打ち合わせをしましょう」教授がアタッシュケースからパソコンを取り出す。

「へ?、、いつどこで?」

「今、ここでです。ちなみに、これは無茶振りなんかじゃありません」

「嘘だーっ!」

その頃、ボクはというと。

居酒屋の駐車場で、他のゴロウゼミの皆さんと親睦を深めていた。

「コーイチちゃん。ご苦労様です」

メンバーのリーダー格でもあるカワノさんが缶コーヒー片手に、ボクに声をかけた。

すらりとしたイケメンボイスで、アコースティックギターを抱える。

いやね。実は、カワノさんは正確には学生ではない。

ちゃんとした長崎でも有名なNPO法人の理事長さんである。

何でも、学生時代から能力についての研究に関わっていたこともあって、いつもテツフミたちを後方支援してくれている頼もしい若手経営者。

実は、ゴロウ教授の頼もしい一番弟子。

結婚旅行にリバプールへ足を運ぶくらいのビートルズマニアで、実際に撮ったアビーロードの写真をFacebookで使うほど。

「なんで、カワノさんがここに来ることになったの?」

「道案内を頼まれたんです。故郷が近いので」

ゼミの皆さんも、思い思い手には缶チューハイを手にしている。

「・・・そろそろ時間ですね」

ブンッ!

空間が揺れて、グレーのミライースが現れた。

ユウキ、ヨウコ、フミカズ、リョウコがぎゅうぎゅう詰めに乗っている。

「どうせ瞬間移動ができるんなら、みんないけるんじゃないかって、気がついたんです」

カワノさんはキメ顔でそう言ったのだった。

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